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消費生活問題

緑のオーナー訴訟の顛末:時効の壁

今日のネタは、緑のオーナー訴訟の顛末。

緑のオーナー制度(*1)とは、林野庁が昭和59年度から平成10年度の間、一般人向けに募集した分収育林制度。国有林の森林整備費用を税金(当時は特別会計)ではなく、国民からの出資で賄うという新規施策でした。出資者には約20〜30年後に成長した山林を競売して得られた収益金を配当するという仕組(分収育林制度)で、8万6千人が一口50万円または25万円で出資し、延べ10万口・500億円が集まりました。
ところが、分収期が始まった平成11年度にはバブル景気はとっくに終わっていて、円高等もあって国内材木相場は暴落。販売収益金が出資金額より少ない「元本割れ」のケースが相次ぎました。
これに怒った一部の出資者が平成21年、林野庁に対して損害賠償請求を求める最初の訴訟提起を起こし、その後も同様の訴訟が相次ぎ提起されました。問題の根本は、募集パンフレットには平成5年前期募集まで、『費用負担額を保証しない旨』の記載がなかったこと。「政府募集なので元本割れがなく、値上がりは確実」と誤認させるかのような募集の仕方だったのです。
そして最高裁判所は昨年、国の責任を認めた一審、二審を支持し、賠償判決が確定しました。
前置きが長くなって恐縮です。ここからが今日のネタのポイントなのですが、実は勝訴した出資者は一部しかいません。何故なら、契約から20年を過ぎたものは、消滅時効の援用(民法第724条)あるいは除斥期間の経過を理由に、裁判所は訴状そのものを受理しなかったからです。弁護団は『そもそも木が育ち、落札価格が判明する頃には消滅時効時期を過ぎており、消滅時効の援用は制度乱用だ』旨のコメントを出しています。林野庁は大変優秀な職員揃いと聞いているので、最初からそれ(出資者が気づいた頃にはとっくに時効)を狙った悪制だったのではないかという疑念すら浮かびます。しかし日本は法治国家。時効制度と一審不再理の原則がある以上、時効を過ぎた出資者の救済は難しそうです。
そこで今日の結論。この制度を金融商品と捉えた場合ですが、投資は自己責任。特に長期の金融商品には注意しましょう。

*1林野庁(緑のオーナー制度のサイト) http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kokumin_mori/katuyo/owner/tetuzuki.html
*2 HNKオンラインの関連記事  http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/270471.html
*2 緑のオーナー制度被害者弁護団のサイト https://greenbengodan.jimdo.com/弁護団声明/

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。