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宅建試験問題解説(R5問5)

今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和5年度の問5です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)

【問 5】 従来の住所又は居所を去った者(以下この問において「不在者」という。)の財産の管理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、この問において「管理人」とは、不在者の財産の管理人をいうものとする。

  1.  不在者が管理人を置かなかったときは、当該不在者の生死が7年間明らかでない場合に限り、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
  2.  不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官から請求があったとしても管理人を改任することはできない。
  3.  家庭裁判所により選任された管理人は、不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した第一審判決に対して控訴を提起するには、家庭裁判所の許可が必要である。
  4.  家庭裁判所により選任された管理人は、保存行為として不在者の自宅を修理することができるほか、家庭裁判所の許可を得てこれを売却することができる。

解説 民法(不在者の財産の管理)

1. × 誤り。ひっかけ問題。「生死が7年間明らかでない場合に限り」部分が誤りで、不在者の財産の管理(民法第25条)にはそのような規定はありません。ちなみに「7年」とは、失踪の宣告(民法第30条)にある規定です。
2. × 誤り。サービス問題。「改任することができない」部分が誤りで、正しくは「改任することができる」です(民法第26条(管理人の改任))。冷静に読めば、これでは不在者の生死がわからないと永久に改任できないことになってしまうので、本肢が誤りであることに気づくと思います。
3. × 誤り。「家庭裁判所の許可が必要」部分が誤りで、正しくは「家庭裁判所の許可は不要」です。本肢は最高裁判例(昭和47年9月1日判決)からの出題で、建物収去土地明渡請求の控訴行為に際して家庭裁判所の許可要否を争った裁判です。判決は「当該控訴行為は、民法第103条に規定する管理人権限の範囲内なので家庭裁判所の許可は不要」でした。
4. ◯ 正しい。民法第28条(管理人の権限)により、その権限(民法第103条に規定)を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができます。本肢の正誤判断の要点は「売却」ですが、個別判断は家庭裁判所が行うので、この部分で迷う必要はありません。

本問は難問。肢3(最高裁判例)と肢4(令和5年4月1日の改正民法)で迷った受験者が多かったのでは。正答できた方はしっかり勉強してきたということ。さすがです。

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。