今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和5年度の問6です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 6】 A所有の甲土地について、Bが所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。
ア. AがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。
イ. Bの取得時効が完成した後に、AがDに対して甲土地を売却しDが所有権移転登記を備え、Bが、Dの登記の日から所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をDに対抗することができる。
ウ. Bの取得時効完成後、Bへの所有権移転登記がなされないままEがAを債務者として甲土地にAから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、Bがその後引き続き所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Eの抵当権は消滅する。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- なし
解説 民法(取得時効)
ア. ◯ 正しい。最高裁判例(昭41年11月22日、所有権確認等請求)からの出題。Bの取得時効が完成する前に、所有者が代わり新所有者が移転登記を済ませたとしても、Bは登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができるとしています。
イ. ◯ 正しい。当事者間の問題 最高裁判例(昭36年7月20日、所有権移転登記手続履行請求)からの出題。不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記した第三者(D)に対しては事項による所有権の取得を対抗しえないが、第三者(D)の上記登記後に占有者(B)がなお引続き時効取得に要する期間専有を継続した場合には、その第三者(D)に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すべきであるとしています。
ウ. ◯ 正しい。最高裁判例(平成24年3月16日、第三者異議事件)からの出題。取得時効完成後、所有権移転登記前に第三者(E)により設定された抵当権は、特段の事情がない限り、再度の取得時効により抵当権は消滅するとしています。
民法第397条(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅):債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
よって正しいものは三つなので、正解は3です。
本問は難問。3つとも最高裁判例からの出題で、かつ個数問題(全ての正誤が正しくないと正答できない)。正答できなくても気にせず、次の問題に取組みましょう。