今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和5年度の問7です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 7】 甲建物を所有するAが死亡し、Aの配偶者Bが甲建物の配偶者居住権を、Aの子Cが甲建物の所有権をそれぞれ取得する旨の遺産分割協議が成立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 遺産分割協議において、Bの配偶者居住権の存続期間が定められなかった場合、配偶者居住権の存続期間は20年となる。
- Bが高齢となり、バリアフリーのマンションに転居するための資金が必要になった場合、Bは、Cの承諾を得ずに甲建物を第三者Dに賃貸することができる。
- Cには、Bに対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務がある。
- Cは、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
解説 民法(配偶者居住権)
- × 誤り。「20年」部分が誤りで、正しくは「終身」です。 民法第1030条(配偶者居住権の存続期間):配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
- × 誤り。居住権(B)と所有権(C)は違う権利なので、BはCの承諾を得ずに甲建物を第三者に賃貸することはできません。 民法第1032条(配偶者による使用及び収益)第3項:配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
- ◯ 正しい。配偶者居住権の最重要部分からの出題です。居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います(民法第1031条(配偶者居住権の登記等))。
- × 誤り。「C」部分が誤りで、正しくは「B」です。「通常の必要費」とは、その建物に居住するのに必要な費用のことで、具体的には固定資産税、修繕費、借地の地代などのことです。 民法第1034条(居住建物の費用の負担)第1項:配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
サービス問題だったので容易に正答できたと思います。但し、肢3の「配偶者居住権の設定登記義務」を知らず、肢4の「通常の必要費」も知らなかった場合、どちらが正解か迷ったかもしれません。