今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和5年度の問10です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 10】 債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額1,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額1,200万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額2,000万円)をそれぞれ有しているが、BがDの利益のため、Aの承諾を得て抵当権の順位を放棄した。甲土地の競売に基づく売却代金が2,400万円であった場合、Bの受ける配当額として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 0円
- 200万円
- 400万円
- 800万円
解説 民法(抵当権の処分)
抵当権の処分(民法第376条)からの出題です。BがDの利益のために抵当権の順位を放棄した場合、C(二番抵当権)が最優先になるので、売却代金2,400万円からCは債権額1200万円を全額回収します。この問題のポイントは売却代金の残り1200万円の扱いです。「BがDの利益のために抵当権の順位を放棄する」とは、BとDが同順位になることを意味し、売却代金の残りをBとDの債権額に応じて按分するということになります。BとDの債権額は1000万円と2000万円なので按分比率は「1:2」。すなわち、売却代金の残り1200万円を「Bは400万円:Dは800万円」の比率で受け取るということになるので、正解は肢3(Bが受ける配当額は400万円)です。
- × 誤り。ひっかけ問題。「順位の放棄」を「順位の譲渡」と誤認した場合、Cが優先して1200万円全額回収する部分は変わりませんが、売却代金の残り1200万円を、DがBより先に債権額2000万円の回収に充てるので、Bが回収できる金額は残らず、この肢に行き着きます。
- × 誤り。「BがDのために順位を放棄」の意味が分からなかったとしても、この肢に行き着く理屈は少ないと思います。
- ◯ 正しい。上記のとおりです。
- × 誤り。「BがDのために順位を放棄」の意味が分からなかったとしても、この肢に行き着く理屈は少ないと思います。
「抵当権の順位の放棄」という珍しい分野からの出題でした。