今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和3年度第1回の問4です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 4】 被相続人Aの配偶者Bが、A所有の建物に相続開始の時に住居していたため、遺産分割協議によって配偶者居住権を取得した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 遺産分割協議でBの配偶者居住権の存続期間を20年と定めた場合、存続期間が満了した時点で配偶者居住権は消滅し、配偶者居住権の延長や更新はできない。
- Bは、配偶者居住権の存続期間内であれば、居住している建物の所有者の承諾を得ることなく、第三者に当該建物を賃貸することができる。
- 配偶者居住権の存続期間中にBが死亡した場合、Bの相続人CはBの有していた。配偶者居住権を相続する。
- Bが配偶者居住権に基づいて居住している建物が第三者Dに売却された場合、Bは、配偶者居住権の登記がなくてもDに対抗することができる。
解説 民法(配偶者居住権)
- ◯ 正しい。配偶者居住権の存続期間は原則終身ですが、遺産分割協議等で期間を定めたときはそれが適用されます。民法第1030条(配偶者居住権の存続期間):配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
- × 誤り。配偶者Bは当該物件の所有権は得ていないので、居住している建物の所有者の承諾を得ることなく第三者に当該建物を賃貸することはできません。民法第1032条(配偶者による使用及び収益)第3項:配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
- × 誤り。配偶者居住権は相続の対象外です。ちなみに、配偶者居住権は譲渡・売却もできません。
- × 誤り。配偶者居住権は、登記がないと第三者に対抗できません。なおこうした事態にならないよう(民法の整合性を保つため)、改正民法では建物所有者は、配偶者所有権を取得した者に対し、配偶者居住権の設定の登記を義務付けています。民法第1031条(配偶者居住権の登記等):居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。第2項:第605条(不動産賃貸借の対抗力)の規定は配偶者居住権について、第605条の4(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
配偶者居住権は、民法改正(令和2年(2020年)4月1日施行)によって新設された規定。首都圏地区等で宅地建物価格が高騰し、被相続人の配偶者が今まで住んでいた建物に住めなくなる事例が社会問題化。その対策として新設されました。配偶者居住権は、建物の価値を所有権と居住権に分けたことが特徴。今後数年間は頻出されると思われます。内容をしっかり覚えておきましょう。