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宅建試験問題解説(R6問3)

今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問3です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)

【問 3】 甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分を有していて、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Dの共有持分は、相続財産には属していないものとする。

  1.  甲土地に、その形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加える場合には、共有者の過半数の同意が必要であり、本件ではA、B、C3人の同意が必要となる。
  2.  甲土地の所有権の登記名義人となっている者が所有者ではないEである場合、持分に基づいてEに対して登記の抹消を求めるためには、所在が判明しているA、B、Cのうち2人の同意が必要である。
  3.  A、B、C3人の同意があれば、甲土地を資材置場として賃借したいFとの間で期間を3年とする賃貸借契約を締結することができる。
  4.  Aが裁判所に請求して、裁判所がDの持分をAに取得させる旨の決定をした場合、Dは、その決定から3年以内に限り、Aが取得したDの共有持分の時価相当額をAに対して支払うよう請求することができる。

解説 民法(共有)

  1.  × 誤り。「過半数の同意が必要」部分が誤りで、正しくは「共有者全員の同意が必要」です。なお本問のようにDの所在を知ることができないときは、他の共有者(A、B、C)が裁判所に請求し、D以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができます。 民法第251条(共有物の変更)第1項、第2項を参照。
  2.  × 誤り。「A、B、Cのうち2人の同意が必要」部分が誤りで、正しくは「A、B、Cの誰でも単独で登記抹消を請求することができる」です。これは最高裁判例( 昭和31年5月10日:不動産所有権移転登記抹消登記手続請求)からの出題で、「不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。」との判決です。即ち、共有物の保存行為であり、単独で登記の抹消を請求できます。民法第252条(共有物の管理)第5項を参照。
  3.  ◯ 正しい。記述のとおりです。土地の賃借権等(樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等を除く)は5年以内なら、共有者の過半数の同意があれば契約締結することができます。民法第262条(共有物の管理)第4項第2号を参照。
  4.  × 誤り。「その決定から3年以内に限り」部分が誤りです。民法の共有にそのような条文はなく、民法の債権等の消滅時効(第166条第1項)が適用されます。よって、正しくは「その決定を知ってから5年以内又はその決定から10年以内」です。

本問は難問。肢2は特に難問で判例からの出題でしたが、正解肢(肢3)は条文とおりの出題だったので、共有についてしっかり勉強していれば正答できたと思います。念のため、共有物の管理についての意思決定方法について記述しておきます。「①使用行為は持分に応じて可能。②変更行為は重大変更なら共有者全員、軽微変更なら過半数。③管理行為は利用・改良行為なら過半数、保存行為は単独で可能。」

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。