今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問5です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 5】 履行遅滞に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 善意の受益者は、その不当利得返還債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債務を自働債券とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
解説 民法(履行遅滞)
- × 誤り。「履行の請求を受けた時から」部分が誤りで、正しくは「不法行為をによる損害の発生と同時に」です。本肢は難問。 民法条文に規定がなく、最高裁判例(昭和37.9.4)で「不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。」とされています。
- ◯ 正しい。善意の受益者(受益したことを知らない人)なので、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います。 民法第703条(不当利得の返還義務):法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
- × 誤り。「履行の請求を受けた時から」部分が誤りで、正しくは「相殺の意思表示をした日の翌日から」です。本肢は難問。民法条文に規定がなく、最高裁判例(平成9.7.15)で「請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。」とされています。
- × 誤り。ひっかけ問題「期限の到来したことを知った後に」部分が誤りです。仮にこの文章が正しければ、期限の到来したことを知らなかったら、履行の請求を受けても遅滞の責任を負わなくてよいことになってしまい、民法規定に抜け道ができてしまします。 民法第412条(履行期と履行遅滞)第2項:債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
本問は判例からの出題が含まれていて難問。正答が判らなかったとしても気にせず、次の問に進みましょう。