今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問10です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 10】 売買契約の目的物が品質に関して契約の内容に適合しない場合において、当該契約不適合が売主及び買主のいずれの責めにも帰することができない事由によるものであるとき、履行の追完請求権、代金の減額請求権、損害賠償請求権及び契約の解除権のうち、民法の規定によれば、買主が行使することができない権利のみを揚げたものとして正しいものは次の記述のうちどれか。なお、上記帰責性以外の点について、権利の行使を妨げる事情はないものとする。
- 履行の追完請求権、損害賠償請求権、契約の解除権
- 代金の減額請求権、損害賠償請求権、契約の解除権
- 履行の追完請求権、代金の減額請求権
- 損害賠償請求権
解説 民法(売買の効力)
- 履行の追完請求権:◯ 買主は行使できる。民法第562条(買主の追完請求権):引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
- 損害賠償請求権:× (売主の責めに帰する理由がないので)買主は行使できない。民法第415条(債務不履行による損害賠償)第1項:債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
- 代金減額請求権:◯ 買主は行使できる。民法第563条(買主の代金減額請求権):前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
- 契約の解除権:◯ 買主は行使できる。民法第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使):前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
以上により、買主が行使できない権利は「損害賠償請求権」だけなので、正解は「4」です。民法を詳しく勉強していなくても、常識で考えて「売主のせいでもないのに、買主が損害賠償請求できるはずがない」と気づけば、本問はサービス問題です。