今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和5年度の問12です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 12】 令和5年7月1日に締結された建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
- 期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。
- 当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。
- 賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
- 現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。
解説 借地借家法(借家)
- × 誤り。「1年とする」部分が誤りで、「期間の定めがない契約」とみなされます。 借地借家法第29条(建物賃貸借の期間)第1項を参照。
- × 誤り。そのような特約は無効です。 借地借家法第32条(借賃増減請求権)第1項:建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
- ◯ 正しい。 民法第605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)第1項:前条(不動産賃貸借の対抗力)、借地借家法第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。 第2項:前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
- × 誤り。そのような規定はありません。なお、最高裁判例(平成3年11月29日、家賃増額確認)でも、「借家法第7条1項の規定(現在の借地借家法第32条(借賃増減請求権)第1項に相当)に基づく賃料増額請求を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない」としています。
今回は正解肢が難問でしたが、他の肢が比較的わかりやすかったので、消去法で正答に近づけたと思います。借地借家法は借主を守るための法律(民法の特例法)。判断に迷ったらその視点で考えましょう。