今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和3年度第1回の問2です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 2】 債務者A、B、Cの3名が、令和3年7月1日に、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対して300万円の連帯債務を負った場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- DがAに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、BとCがDに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。
- BがDに対して300万円の債権を有している場合、Bが相殺を援用しない間に300万円の支払の請求を受けたCは、BのDに対する債権で相殺する旨の意思表示をすることができる。
- DがCに対して債務を免除した場合でも、特段の合意がなければ、DはAに対してもBに対しても、弁済期が到来した300万円全額の支払を請求することができる。
- AとDとの間に更改があったときは、300万円の債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
解説 民法(連帯債務)
- ◯ 正しい。「請求」は他の連帯債務者に対しその効力を生じないので、BとCの消滅時効時期は影響を受けません。他の連帯債務者に対しその効力を生じるのは「更改・相殺・混同」です。 民法第441条(相対的効力の原則):第438条(更改)、第439条(相殺)第1項及び前条(第440条、混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
- × 誤り。債務者Cが相殺の意思表示(支払拒否)できるのは、全額(300万円)ではなく、Cの負担部分(100万円)までです。 民法第439条(連帯債務者の一人による相殺等):連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。同条第2項:前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
- ◯ 正しい。「免除」は他の連帯債務者に対しその効力を生じません。他の連帯債務者に対しその効力を生じるのは「更改・相殺・混同」です。
- ◯ 正しい。民法条文そのままです。 民法第438条(連帯債務者の一人との間の更改):連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 民法第513条(更改):当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。(以下略)
連帯債務(民法第436条〜第445条)は数年に一度程度しか出題されません。勉強していれば楽勝ですが、勉強していないとお手上げだと思います。