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宅建試験問題解説(R3第1回問8)

今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和3年度第1回の問8です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)

【問 8】 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、令和3年7月1日に甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした場合(以下この問において「本件事故」という。)における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1.  Aが甲建物をCから賃借している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしなかったとしても、Bに対して不法行為責任を負わない。
  2.  Aが甲建物を所有している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしたとしても、Bに対して不法行為責任を負う。
  3.  本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らない時でも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効による消滅する。
  4.  本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。

解説 民法(不法行為)

  1.  × 誤り。「…発生の防止に注意をしなかったとしても」部分が誤りで、建物の占有者であるAが不法行為責任を負います。民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任):土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  2.  ◯ 正しい。Aは、損害の発生の防止に必要な注意をすれば占有者としては免責されますが、所有者としては免責されません。民法第717条参照。
  3.  ◯ 正しい。民法第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効):不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。第1号:被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。第2号:不法行為の時から20年間行使しないとき。
  4.  ◯ 正しい。ひっかけ問題。民法第724条規定の当該消滅時効は3年間ですが、Bはケガをしているので、民法第724条の2規定が適用され、本件事故の消滅時効は5年間になります。民法第724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効):人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。