今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問2です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 2】 委任契約・準委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 売主が、売買契約の付随事項として、買主に対して、マンション専有部分内の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行なっていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。
- 受任者は、委託者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由がある時でなければ、復受任者を選任することができない。
- 委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。
- 委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。
解説 民法(委任)
- ◯ 正しい。最高裁判例(平成17.9.16)からの出題。マンションの売買において、防火戸が作動しない状態で引き渡されたことにつき、売主から委託を受けてマンション販売に関する一切の事務を行っていた宅建業者に、防火扉の操作方法等につき、買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例です。「防火戸…」の文章で、判例からの出題だと気付いたと思いますが、買主の立場で考えて、売主と密接な関係にある受任者から防火戸の説明がなかったら、買主はどうしたら救われるのかと考えれば、本肢が正しいと推察できると思います。加えて受験テクニックですが、「…ことがある」との曖昧な記述があったら、正しいと決め打ちしても良いと思います。
- ◯ 正しい。記述のとおりです。民法第644条の2(復受任者の選任等)を参照。
- ◯ 正しい。本肢は難問。委任者の死亡により委任契約は解除されますが(民法第653条(委任の終了事由)を参照。)、通説・判例では民法653条を任意規定と解しており、当事者の合意によりその適用を排除することが可能とされています。
- × 誤り。ひっかけ問題。これは請負契約のことです。委任契約は原則として無償の諾成契約です。特約がなければ、受任者は委任者に報酬を請求することができません。民法第648条(受任者の報酬)を参照。
本問は難問。肢1は判例からの出題ですし、肢3は民法規定とは異なる記述なのに通説・判例では正しいとされていて、一般の宅建試験受験者が判るはずありません。そもそも判例は、民法規定では判断できない問題が裁判になりその判断結果なので、難問が多いです。宅建試験本番では1問2分間ペースで回答する必要があるので、正誤判断に迷ったらとりあえず有力だと思う番号をマークし、次の問題に進み、最後に時間が余ったら再考するようにしましょう。