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宅建試験問題解説(R6問4)

今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問4です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)

【問 4】 Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1.  売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。
  2.  Bが期日までに売買代金を支払わない場合であっても、本件契約の解除権はAの一身に専属した権利であるため、Cは本件契約を解除することはできない。
  3.  Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。
  4.  本件契約が、Aの詐欺により締結されたものである場合、BはCに対して、本件契約の取消しを主張することができる。

解説 民法(契約の解除)

  1.  × 誤り。サービス問題。「Bは相当の期間を定めた催告が必要」旨が誤りで、正しくは「Bは催告をすることなく本件契約を解除できる」です。Cは売買代金を受領済みなので債務者であり、その債務履行拒絶意思を明確に表示しているので、Bは催告によらない解除ができます。民法第542条(催告によらない解除)第1項第2号を参照。常識で考えて、Cが代金受け取っているのに甲土地を引渡ししないなら、Bは即契約解除してかつ「金返せ」と言えると想像できると思います。
  2.  × 誤り。サービス問題。「解除権はAの一身に専属した権利」部分が誤りです。Aを相続したCは、相当の期間を定めて催告し、それでもBが支払わないなら契約を解除できます。民法第541条(催告による解除)を参照。常識で考えて、Bが売買代金を支払わないのに、Cが相続人だからと言う理由で契約解除できないなんてあり得ないと想像できると思います。
  3.  × 誤り。サービス問題。「甲土地の所有権登記を備えなければ土地引渡しを請求できない」旨が誤りです。所有権登記が必要になるのは第三者に対抗するときであり、(Aを相続した)CとBは対抗関係ではなく当事者関係です。よってBは、Cに対して甲土地の引渡しを請求するのに登記を備えている必要はありません。民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)を参照。常識で考えて、Bが代金を支払い済みなら、甲土地の引渡しを請求できるのは当然だと想像できると思います。
  4.  ◯ 正しい。サービス問題。詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができます。民法第96条(詐欺又は強迫)を参照。

契約の解除に相続関係を絡ませての出題でしたが、全ての肢がサービス問題だったので正答できた受験者が多かったと思います。なお、一身専属権利(相続されない権利:年金、運転免許、宅建士資格、著作権等)については常識の範囲内の権利ですが、この機会に一度調べておくことをおすすめします。

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。