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危機管理

幹部の責任逃れは珍しくない

某大学のスポーツ部員が、対戦相手に怪我をさせる目的で反則プレーをした事が波紋を呼んでいます。

ワイドショーが食いついた訳は、この反則プレーが当該選手だけの判断ではなく、部長やコーチによる教唆であったのではないかという疑惑。まるでTVドラマの「部下に責任を押しつけて逃げようとしている上司の姿」のリアル版に見えます。しかも、その瞬間を撮影したビデオ映像が複数あり、TV視聴者の誰もがその状況証拠を視聴できるので、さながらTV&視聴者によるリンチ(法律によらない集団的な私的制裁。いわゆる魔女狩り)の様相を呈しつつあります。

私はTVコメンテーターでないので、この途中経過状況の段階で結論めいたコメントはしません。でもひとつだけ言いたい事があります。それは、「組織幹部の責任逃れは珍しいことではない」ということ。

その根拠は単純明快です。責任を取らなかったからここまで出世したのです。組織で出世するには成果を出す事は必須条件ですが、実は出世するほど部下が増え、部下が増えればトラブル対応も当然に増えていきます。ところが「仕事が出来て、責任感があり、頼り甲斐がある」上司や先輩は、当然に部下の失敗の責任を取りますから、それ以上偉くなれないものなのです。成果を出し続け、トラブル対策に成功し続けた人(部下に責任を押し付ける場合を含む)だけが組織の幹部まで登りきることができるのです。ですから組織幹部には、トラブル対策に対してまるっきり無能は人が散見されるのです。

話を戻してスポーツの世界では、ビジネスの世界よりも成果に比重が置かれ、トラブル対策に慣れていない人が多そうです。トラブル対策に対して無能な幹部が生まれる土壌があるかもしれないと思っています。

ところで、反則プレーをした当該選手は、マインドコントロールされていたようで大変お気の毒でした。しかしそれでも立派なのは「あくまで自己責任」として謝罪と反省の発言を貫いたこと。当該選手にはまだ60年以上の人生が残っています。今回の失敗を反省点にして再出発し、今後胸をはって生きていくためには、この謝罪と反省は避けて通れないポイントでしたが、見事にそれをやってのけました。

順風満帆の人生なんてあり得ません。人は物心ついてからお迎えが来るまで、努力し続けるのは当然のこと。それでも何度となくトラブルに見舞われ、大きな岐路に立たされ、その場で判断しなければなりません。彼はその内の一つは良い判断で切り抜けました。彼の残りの人生が充実したものになることを祈念しています。

作成者: Takahiro

きくちたかひろ
消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー&宅地建物取引士。「賢い消費者」を応援する各種お役立ち情報を、趣味の街歩きや資格情報も織り交ぜて発信しています。なお相談対応は、紹介のある方に限らせていただいています。