今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和6年度の問27です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 27】 宅地建物取引業者Aに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、Aは宅地建物取引業保証協会の社員ではないものとする。
1. Aが主たる事務所を移転したことにより、その最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみをもって営業保証金を供託しているときは、遅滞なく営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなけれなならない。
2. Aの従業員が運転する車両で現地案内を受けた者が、Aの従業員の過失による交通事故でケガをした場合に取得する損害賠償請求権は、Aが供託した営業保証金の還付の対象債権となる。
3. Aは、金銭と有価証券を併用して供託することができ、有価証券のみで供託する場合の当該有価証券の価額は、国債証券の場合はその額面金額の100分の90、地方債証券の場合はその額面金額の 100分の80である。
4. Aは甲県内にある主たる事務所とは別に、乙県内に新たに従たる事務所を設置したときは、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない。
解説 宅建業法(営業保証金)
1. × 誤り。「新たに供託」部分が誤りで、正しくは「保管替えの請求」です。営業保証金を供託している内容によって扱いが異なります。金銭のみで供託している場合、「保管替えの請求」で手続きできます。つまり、書類手続きだけで供託金を移動できます。一方、金銭以外(国債証券など)も含めて供託している場合、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければなりません。これは、供託金(国債証券等を含む)を物理的に移動しなければならず、その手間は供託所は負わないためです。 宅地建物取引業法第29条(営業保証金の保管替え等)を参照。
2. × 誤り。当該事故の損賠賠償請求は、営業保証金の還付対象外です。営業保証金の還付対象は、宅建業に関する取引により生じた債権です。 宅地建物取引業法第27条(営業保証金の還付)第1項:宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。
3. × 誤り。当該有価証券の価額が誤りで、正しくは「国債証券は額面金額の100%、地方債証券は額面金額の90%」です。 宅地建物取引業法施行規則第15条(営業保証金又は弁済業務保証金に充てることができる有価証券の価額)を参照。
4. ◯ 正しい。記述のとおりで、支店がどこに増えようとも、営業保証金の追加供託先は主たる事務所の最寄りの供託所です。 宅地建物取引業法第26条(事務所新設の場合の営業保証金)第1項:宅地建物取引業者は、事業の開始後新たに事務所を設置したとき(中略)は、当該事務所につき前条第2項の政令で定める額の営業保証金を供託しなければならない。
「営業保証金制度」と「宅地建物取引業保証協会」は、消費者(宅建業者と取引した者で、宅建業者以外) を取引トラブル(金銭的トラブル)から守るための仕組みです。それぞれの違いをしっかり覚えておきましょう。