今日のネタは、宅建試験の過去問解説。令和7年度の問7です。(独自解説のため誤解説の場合はご容赦ください。)
【問 7】 Aは自己の所有する甲建物を事務所としてBに賃貸し(以下この問において「本件契約」という。)、その後、本件契約の期間中に甲建物の屋根に雨漏りが生じたため、CがBから甲建物の屋根の修理を請け負い、Cによる修理が完了した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1. BがCに修理代金を支払わないまま無資力となり、賃料を滞納して本件契約が解除されたことにより甲建物はAに明け渡された。この場合、CはAに対して、事務管理に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできない。
2. BがCに修理代金を支払ったとしても、本件契約において、Aの負担に属するとされる甲建物の屋根の修理費用について直ちに償還請求することができる旨の特約がない限り、契約終了時でなければ、BはAに対して償還を求めることはできない。
3. BがCに修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲建物につき、当然に不動産工事の先取特権を行使することができる。
4. BがCに修理代金を支払わないまま無資力となり、賃料を滞納して本件契約が解除されたことにより甲建物はAに明け渡された。本件契約において、BがAに権利金を支払わないことの代償として、甲建物の修理費用をBの負担とする旨の特約が存し、当該屋根の修理費用と権利金が相応していたときであっても、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることができる。
解説 民法(賃貸借)
1. ○ 正しい。最高裁判例(H7.9.19)からの出題。借主より請け負って修繕工事をした者が、借主の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得返還請求をする場合には、建物所有者が対価関係なしに修繕工事の利益を受けたときに限られます。なお、民法第706条の2(賃借人による修繕)では、賃借人が修理できるのは、①修繕が必要な旨を賃貸人に通知したにも関わらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修理をしないとき、②急迫の事情があるとき。となっており、判例を知らなければ本肢は「誤り」だと判断しても仕方ありません。
2. × 誤り。「契約終了時でなければ…償還を求めることはできない」部分が誤りで、正しくは「直ちに償還を求めることができる」です。 民法第608条(賃借人による費用の償還請求)第1項を参照。
3. × 誤り。「当然に」部分が誤りです。Bは甲建物の賃借人であって所有者ではないので、Cは甲建物に先取特権を行使できません。 民法第327条(不動産工事の先取特権)第1項を参照。
4. × 誤り。支払いを求めることはできません。肢1の解説で記したように、最高裁判例(H7.9.19)では、借主より請け負って修繕工事をした者が、借主の無資力を理由に建物所有者に対し不当利得返還請求をする場合には、建物所有者が対価関係なしに修繕工事の利益を受けたときに限られます。建物所有者Aは、権利金を受け取っておらず、家賃も回収できていないため、修繕工事の利益を受けたとは言えず、CはAに対して、不当利得に基づいて修理費用相当額の支払を求めることはできません。
本問は難問。問題文に「判例によれば」とあれば、そもそも民法条文だけでは判断が難しい事例なので、正答困難と思ったらさっさと諦めて、次の問に取り組みましょう。

